スイングバイ
霜天

モノクロの描画、朝が朝になって
いつも間違えそうな、窓に走る線のひとつふたつ
数えることを踏みとどめて
大きな朝に、誰もいない交差点に、スクランブルに
点滅する青と赤に、おはようと言うための
ひとりぼっち
いつの間にか蒸発した珈琲が部屋に満ちて
僕らは無理矢理に起こされる


大きな揺れ幅、きっといつかは


支えられる水銀柱
空へ押し上げる大気圧は
きっと君に似ている
存在の証明は
いつか蒸発して、気体になって、空になって青
誰も望まない理解できるはずの気持ちのこと
僕らは語るようにして、海に流す
川が合流していくような世界
冬には干された布団の
日向の匂いと信じていたもの
そこにあることに感謝するごとに
僕らは証明されていく

あの丘の裏表
遠い星の不確かなこと
朧気な景色を回るようにして
それでも僕は帰っていくから

遠回り、今は
さよならと言い忘れて



真夜中の工事現場で振られる光
何も知らなければいいと、言えば嘘になるはずで
ペーパーテストの上の女子高生
答えを見ない瞳で誰かに語りかけたいはずで
駅で車内で、吐き出されていく靴音、表情
いつでも、どこかに寄りかかりたいはずで

誰も、わからないと言えば
すべてがすべてになれる
なんてそんなはずもなく
世界は平等に、寡黙だ
うずくまる、日のための
あの星を回って
振り回されて
帰るための速度へ



それでも朝で

モノクロの空と空、青になる過程を観察して
光が射し込んで、窓に走る線のひとつふたつ
確かめるまでもなく、僕らはひとりぼっちで
その言葉で繋がって
珈琲の湯気、それだけで元気になる
そんな思い込みで
世界に出会いたい
遠回りをして、いつもそれだけのための

大きな朝に、家並に、吸い込まれていく人たちに
零れていく表情の交差点に、点滅する青と赤に

出会うための

おはようと
言うため、の


自由詩 スイングバイ Copyright 霜天 2006-02-19 01:34:54
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