どっちつかず
腰抜け若鶏
「詩を書くのが趣味です」そう言うと決まって引かれる。
詩って暗い奴が書く意味不明なキモい文だと普通の人は思うらしい。
なので、それを暴露すると嘲りの笑みでもって迎えられる。
芸術を解さない馬鹿な奴らだ、そう言って彼らを切り捨てることはできない。
彼らは僕の友人、それ以上の仲間みたいな存在だ。
なので僕は詩の素晴らしさをいつも理屈で説明しようとする。
「詩っていうのは誰にでも書けるものじゃないんだよ。
普通の人が書く文はどこかで見たり聞いたりしたようなありきたりな文章になる。
でも詩人っていうのはそういうのにもう飽きてしまった人で、
見慣れない表現や、普通なら発想できない比喩、まったく新しい単語を使って
文章を作ることができるんだよ。その力があれば将来、
広報関係で働いた時に人目を引くキャッチフレーズが考えられるだろうし、
開発関係で今までにない全く新しい商品を開発したりすることもできるだろ?」
けれど、出会う度にいちいちそんな長ったらしい説明をする訳にもいかない。
なので僕はいっそのこと彼らの持っている詩のイメージを打ち砕きたいのだ。
暗くて後ろ向きな救いようのない内容じゃなくて、
読んでも何を書いているのか分からないキモイ文章じゃなくて、
明るく元気に勇気の出るような内容で、
何が書いてあるのか一目で分かる簡潔な文章を。
その結果、僕はどっちつかずになる。
詩人としても高く評価されず、周りのみんなからも高く評価されない。
それでも僕は歌うことを辞める気なんて少しもない。
いつか詩人としても周りからも最高の評価を得られる詩が書ける。
馬鹿みたいにそう信じているから。