[ 無機物の憂鬱 ]
渕崎。



空が白んで、今日も一日が始まります。
有機物であるはずのわたしはまるで無機物のように
さしたる感慨もなく、ただ白む空を眺めます。
雀が一羽、飛び立ちました。


白んだ空が、眩しさを極めれば
有機物のはずの無機物たちは忙しなく動き出し
大気をざわりざわりと揺さぶります。
犬が一匹、大きな欠伸をしました。


眩しさを極めた空が、白い雲を食むとき
有機無機物はがやがやとあちらこちらに散らばり
白く眩しい太陽がじわりじわりと地面を焦がします。
猫が一匹、すやすやと眠っていました。


白い雲が黄昏色に染まる頃
有機物であるはずの無機物はてんでバラバラに帰路へつき
まぁるい夕日はいびつに歪んで、ビルの向こうへ消えて行きます。
鴉が一羽、甲高く鳴きました。


黄昏色がすっかり闇色に変れば
有機物であるはずのわたしは無機物となり
ただただぼんやりと無機物であることへ思いを馳せます。
星がひとつ、夜空で瞬いていました。


自由詩 [ 無機物の憂鬱 ] Copyright 渕崎。 2006-02-15 08:12:05
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