小梅のエスキス
恋月 ぴの
屈めた背中を ゆっくりと伸ばすように
季節は移り変わる
それは水指に潜む 小梅の性
三寒四温の質感を受けいれては ひとり悦に入る
(ああ 春は素敵な季節
(水指の渇望は
(滴り落ちる つゆに
(濡れて 満たされるのね
魯山人作の織部焼を写す 茶碗の縁に
色鮮やかな 紅差す その細い小指で辿るのは
霞たなびく 交接 の 極み
(小梅 小梅なのね わたくし
何を計り茶碗を廻すのか くるり
終の旅行きを告げる暁 茶筅で捏ねる鞐の あなた
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