本気だった
クリ


 さよならで固まる

 夜が明ける 人が行く

 陽が差す 酸性雨に降りしきられる

 あの小さな子がこんなに大きくなる

 区画整理が始まる

 建て替え決議がなされる

 落葉が降り積もる

 未曾有の豪雪に関節がきしむ

 すべてが行き交う

 一人だけ残る 引き続き固まり続ける


 行った覚えのない春がまた来る

 黄昏る 曙る

 波は寄せる 波は返す

 伏せた睫毛の残像を見るともなく見る

 まだまだどうして固まったままでいる

 桜前線に追い抜かれる

 鳥に巣を作られる

 烏に狙われる キタキツネに登られる

 似た人がしばしとどまる

 雛が巣立っていく しんとする



  涙がやっとこさ出る



                       Kuri, Kipple : 2002.07.26


自由詩 本気だった Copyright クリ 2004-02-01 02:24:19
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