誰かの心のかけらを
さくらほ

仄白い朝の駅への道で
誰かの心のかけらを
見つけました

それは「忙しい、忙しい」って言って
かりかりしていました
それは周りを気にする事なく
くるくると回り続けていました

私は何かできたら・・と思ったけど
手を伸ばすとはじかれそうで
そっとしておきました



満員電車の中で
誰かの心のかけらを
見つけました

それは愛する誰かを思って
青くなったり赤くなったり
ドキドキハラハラしていました

私は思わずその心をポーンと押してあげようと思ったけど
心の中で「フレーフレー」と応援するだけにしました



学校の体育館の前で
誰かの心のかけらを
見つけました

それは孤独に脅えて
たぷんたぷんであふれ出そうな涙を零れ落ちないように
必死にバランスをとっていました

私は昔の自分を見るようで
ちょっとだけ辛くなって
そのかけらの横に
吸水力抜群のハンドタオルを置いておきました



病院の洗濯機の前で
誰かの心のかけらを
見つけました

それは小さき者を憂い神に祈る
震える切ない色をしたかけらでした

私は懐かしい何かに触れたような気がして
私の心まで震えました
ただただ手を合わせ祈りました



曇り空の下
誰かの心のかけらを
見つけました

それは信じるものを無くしてしまい
色もなく凍りついておりました

私は何か声をかけようと思ったけど
気の利いた言葉が何一つ浮かんでこず
通り過ぎる事もできず
横にいる事しか出来ませんでした




何かをしてあげたくても
何も出来ない私です
弱い弱い私です
それに結構良い人じゃありません

私の心のかけらもそこら中に落としながら生きています

それでも
それでも
誰かの心のかけらを見つけたならば
何かを願わずにはいられないのです


未詩・独白 誰かの心のかけらを Copyright さくらほ 2006-02-14 16:36:53
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