チョコの春
あおば


敵はさるもの溶けるもの
固める温度の僅かな違い
なかなか上手にまいりません

昨日の昼休みに集まって
レシピ片手に挑みます
仕事のことは打っ棄って
頭の中はチョコだらけ
にこやかに真剣に挑みます
少しは仕事に身を入れろ
明日の納期は大丈夫か
課長さんはオロオロと
心配の荷物を集めては背に負って
狭い階段とぼとぼと降りて行く
確かに明日は納期だが
バレンタインは明日だけだ
とても勝負にャなりャしない
これが最後と乾坤一擲挑戦す
午後の休みに見にゆくと
極上品が出来あがり
見せびらかしの行進と
電話連絡、情報の網、空に舞う
わたしにもおこぼれ下さいな
午後のおやつは気もそぞろ
つやつや光る宝もの頂いて
眺めすかして息を呑む
遠くの空を眺めても
義理チョコの味に
染まりゆく
深いため息恋やつれ
今年の春の黄昏は
チョコレート色になりました





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数年前に書いたものです。


未詩・独白 チョコの春 Copyright あおば 2006-02-11 22:12:49
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