大人
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悲しかった
誰も居なくて
もう駄目だと思った
浴槽に涙を落として
からだをまるめた

お願いだから、わたしからとりあげないで

仰向けのわたしを杭で
ぶすりぶすりと刺し続けている
ゆっくり
ゆっくりと
体の外へ音楽が流れ出ていく
赤く、熱い、
やがて、黒く、冷たい
そして、染みになって残る怨念のような

悲しかった
わたしはあなたの上から地面へ押しやる
あなたはわたしの足をずるりと引き抜く
悲しかった
わたしはあなたに寄りかかる
あなたはわたしに寄りかかる
重みと重みで穴が開く
大地にめりこんで
もっともっと深く
誰にも気づかれないように
そこで
殺し合いなんてやめて、大人しくなろう
なんの音も聞こえないね

夢、を、追いかけるんではなかったの
夢を夢と呼んでしまったら、
もうそれは現実にはなり得ないと自分で認めたことになるの
ねえ
唇に毒を塗ってキスをする?
海の中で
汚く膨れ上がった野性的な仕上がりになるだろう

悲しかった
誰もいないし
悲しい
酸素をくれるのは誰
一年後のわたしは誰
杭を打ち続ける
かつんかつんと音がする

弱い
弱くて醜い仕上がりに

明日には、もう付いていけないよ
死ぬことを考えるなんて馬鹿げてる
のか
そうだ、
夢を持ちなさい
と、先生は、言っていたけど、先生は、ほんとに先生になりたかったの
かな

悲しかった
誰も居ないのに
笑え
笑え
シャワーが顔に当たる
眩しい顔になる
笑え
生きていくために

わたしはわたしに杭を打つ









自由詩 大人 Copyright ________ 2006-02-09 11:20:33
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