ゆきだるまの葬列
北乃ゆき

今日はとても良いお天気でした
冬なのにお日様がきらきらして
だから
4日前
クラスのみんなが校庭のはしっこに作っていた
大きなゆきだるまは
顔がぐしゃぐしゃにくずれていて
手袋をはいていた腕は
ただの木の棒きれになっていて
半分とけた胴体は
垣間見えた泥と混じって汚れています

きみは知っていたかい
きみが生まれた時
校庭のはしっこのはしっこで
立っていたぼくの事を

きみは知っていたかい
みんなにかこまれるきみを
校庭のはしっこのはしっこで
うらやましそうにみていたぼくの事を

ぼくはきみがきらいです

あの冬の日
ぼくをむししたじゃないか
はしっこのはしっこに立つぼくを知っていて
知らないふりをしたじゃないか
知らなくてもいいと思ったじゃないか



ぼくはきみがきらいです




ゆきだるまは
ぐしゃぐしゃな顔と
汚い胴体

ぼくはきみがきらいです

1本しかない手と目
口はもうありません

ぼくはきみがきらいです




クラスのみんなは
ゆきだるまの事なんてすっかり忘れて
今日は体育館で遊んでいます

ぼくはきょうもひとりです

ゆきだるまもきょうはひとりです

ぼくはきみがきらいだったけど
くずれたきみの姿が
ぼくに似ているから
ひとりとひとりで
ふたりでいるような気がします





4日前みんなが遊んでいた校庭のはしっこは
今はもうどろどろで
ゆきだるまと雪の塊の中間のような物体が
あるだけです


明日もきっと
お日様がかがやいて
明日には
ぼくはまたひとりです




自由詩 ゆきだるまの葬列 Copyright 北乃ゆき 2006-02-09 01:35:09
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