水獣域
木立 悟
光の点の物語
夜の喪に立つ蒼い蝋柱
けものの笑みが途切れ途切れる
風が廃駅を削いでいく
茶のひろがりの終わるところに
金にかがやく草で編まれた
湿地のための墓がある
緑が吹き 緑が降り
砕けたものすべてに融けてゆく
夜の音の内のひとつが走り
感じることのできない何かに触れては散ってゆく
けもののかたちのひかりのようにかがやくけもの
あなたはあなたのままみなのものになる
いざなうものはただあしもとにある
消えにくい闇に棲み
舌で羽を磨くもの
あらゆる水の音に立ち
土を撫でる光の輪
石で描かれた疵のある月
けもののからだに残るもの