チャーシューメン
佐野権太
僕は汁だ
先代から受け継いだダシに
自らの厳選した経験を加え
己の舌を信じ
独特の旨味を抽出したつもりだ
まだ完成したとは思っていない
君は麺だ
やわらかい泡で
大切に茹であげられて後
汁との契りを交わした
ちょっと捩れた感じだが
それは汁を絡めるための
秘訣なんだそうだ
そしてこの魅力的なチャーシュウは
子供たちだ
麺の上に慎重に並べられ
汁に浸ってテラテラと輝いている
エネルギーの源だ
パパ食べないの
チャーが覗き込む
汁さめちゃうよ
シュウの不吉な助言にあわてて箸を割る
麺の視線を気にしながら
ズズズズッと吸い込むと
味わうまもなく
むせた
チャーとシュウが笑い
麺が背をさする
捩れていない方の手で