追われるもの
麒麟


そこは大きな空間だった
見上げる空も、土も、地平線ですら
堺がない
白の虚構

来た。
奴が来た。
行かなきゃ。
急がなければ!

僕は走り出した
冷たい革靴の音がする
背中に奴の、
奴の足音が迫ってる…!

何故だ、何故なんだ!
全力で走っているのに景色が、
変らない
同じ場所から、進めていない

その時
目の前にわずかなささくれを見つけ
乱暴に掴み
一思いに引きちぎった!

…頼りない障子紙のように
白い世界は破れていった。
眼前に広がるのは
黒の虚構

来た。
奴が来た。
行かなきゃ。
急がなければ!

走り出した
奴は止まらない
足音が迫る…
足音が迫る!

おかしい
こんなに駆けているのに進めない…
おかしいんだ!

その時
目の前にわずかなささくれを見つけ
乱暴に掴み
一思いに引きちぎった!




(最初に戻って読んでみてください)


自由詩 追われるもの Copyright 麒麟 2006-02-06 23:05:50
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