ふきのと
蒼木りん

まだ雪が降るらしい

2月の空は
春の寝ぼけのような曇り空しか浮ばず
ふきのとうの天ぷらが
とれたてでないために
それはスーパーの惣菜だから
わたしの目を覚まさない
ぐずぐずしてる春が
なんだか嫌いだ

気が向いたら
そのためだけに新幹線に乗り
在来線に乗り換え
駅から歩いて
キオスクで買った手土産もさげて道すがら
冬の農閑期
庭仕事のじいさんばあさんと孫に
こんにちは

ああ
帰ってきたのがい

ふきのととりに来ました

夕飯にだす
ふきのとうの天ぷら
食しながら
身体が正常に戻る
薬草はこんなにも美味い

その明日の朝
お土産のふきのとうを摘んで
埃っぽい街に帰ると
ビニール袋の中で
ふきのとうはくたっとしてるだろう

だけどもう冬に向かわないから



未詩・独白 ふきのと Copyright 蒼木りん 2006-02-06 10:41:06
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