雨に濡れた白鷺
服部 剛

二月の冷たい雨が降る午後
近所の喫茶店でお茶を飲みに
愛読書を鞄に入れ ビニール傘を差し
家の門を出て川沿いの道を歩いた 

川の流れるほとりの土に
一羽の白鷺しらさぎが雨に濡れたまま立っていた

この腕を眼下へ伸ばし
胸に抱え 暖かい家の中へ入れてやり
タオルで濡れた白い毛並みを包みたかった

純白の羽にこの手は届くすべもなく
道の上で一時ひとときたたずんでいた

 一瞬

じっと見つめる僕の瞳と
白鷺の小さく黒い瞳が合い 

雨の降りそそぐ川の水面みなもの上を
広げた翼は羽ばたいて
遠い橋の下に身をひそめた白鷺は
独り静かに立っていた 

川に背を向けた
僕も独り
喫茶店へと続く濡れた歩道を歩く

曇った空の彼方かなたから
ビニール傘へと落ちてくる
雨唄のを聞きながら 





自由詩 雨に濡れた白鷺 Copyright 服部 剛 2006-02-01 16:56:48
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