和音未満
霜天
遠い朝では
誰かが零れていく音が届く
十三階建てのビルの可能性のひとつ
非常階段の手すりはそれでもまだ綺麗で
ただいま、というその言葉の行方も知らない
人の夢に誰かが寄りかかって
君は聞こえない、という顔をするしかない
さよならの、その引力へ
迷うことも、吸い込まれていく人の顔は
もう、溶けていく絵のように滑らかに
遠い朝でも
離れていく誰かの音が聞こえる
いなくなる声と、響いていかない声と
重ね合わせることにも
いつのまにか、冷たさに風は紛れるようにして
歩くように、する君のことなら
手のひらはそこに向けて、高いところで話していた
狭くなる空、まだ伸びていく非常階段に
誰かが零れていく音が届く
遠い朝にも、今日も
遠い朝にも
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