和音未満
霜天

遠い朝では
誰かが零れていく音が届く
十三階建てのビルの可能性のひとつ
非常階段の手すりはそれでもまだ綺麗で
ただいま、というその言葉の行方も知らない

人の夢に誰かが寄りかかって
君は聞こえない、という顔をするしかない
さよならの、その引力へ
迷うことも、吸い込まれていく人の顔は
もう、溶けていく絵のように滑らかに


遠い朝でも
離れていく誰かの音が聞こえる
いなくなる声と、響いていかない声と
重ね合わせることにも

いつのまにか、冷たさに風は紛れるようにして


歩くように、する君のことなら
手のひらはそこに向けて、高いところで話していた
狭くなる空、まだ伸びていく非常階段に
誰かが零れていく音が届く
遠い朝にも、今日も

遠い朝にも


自由詩 和音未満 Copyright 霜天 2006-02-01 00:15:19
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
四文字熟語