球体
なかやまそう

正義と悪の
がいねんは
小さい頃に
戦隊ヒーローから
おしえられた

ものごとを
きょくたんに
2つに分けたがる
習性もピンチに
なったら他力本願な
体質もきっと
そのときからだ

ガチャガチャを
まわすとヒーローが
でてきたので
無邪気に笑える
シンプルな感慨も
きっとそのとき
植え付けられた
戦隊モノ感


毎朝玄関のノブを
まわして出てくる
まだ見ぬ日常は
2つにわけられるほど
シンプルなモノでは
ないけれど
ぱかっとあけた
まあるい
たまから反射的に
あらわれる
ぼくの感情は
コトバとなって
ささやかなぼくの
日常をかたちづくる


毎朝とめる
自転車おきばで
朝日にむかって
パンチとキックの
練習をしている
ホームレスが
真剣なまなざしで
空気とたたかっているから
おねがいしますと
コートとマフラーを
なげすてて
12月9日午前8時19分ごろ
歴史にのこる
一戦をまじえた

なぜ働くのかパンチを
かわしながら
背後にまわり
所得バックドロップを
かまそうとおもったら
ぼくもホームレスも
小川にうかぶ
まあるい球体に
すいこまれて

ゆらゆらゆられながら
ぼくとホームレスは
体育すわりして
それぞれの
プラスチックみたいな
球体のなかで
ぼんやりと過ごしていた

暗やみのなかで
かすかにひかる
出口がみえる

球体には赤ちゃんや
こじかや冬眠中のくまや
ホームレスや
ミドリの芽やアイデアやらが

まだ見ぬ日常を
かたちづくるすべてのモノが
それぞれの球体のなかで
たたずんでいた

ボコンボコンと
つぎつぎにあふれだす
ひかりにおちるモノたちと
無邪気に笑えない
トコロにおちるモノたちと


ぼくが落ちる日常は
もう
すぐそこだった





自由詩 球体 Copyright なかやまそう 2006-01-31 01:48:03
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