アルビノのウスバカゲロウ
人間

薄馬鹿下朗だっきゃ工場さ勤めで長げくて、数年前から屠殺係についでらっきゃさ。
レバー上げれば格子さ固定されでら豚運ばれで、
レバー下げれば豚の首っこ飛ぶ。
一日中椅子さ座ってさ。

塗装し直した工場の、入口にだっきゃ、くたびれでら爺の犬っこ繋がれで、
晴れも雨も、えぐってこさえだドラム缶さ隠れで、
蛇口さ漏れでら水舐めでらじゃ。

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗、素人童貞だばって、去年風俗女さ性病貰ったて、鼠っこさ自慢してらの見だ。
昼飯だばいっつも、屋上で工場長と並んで食べでらじゃ。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗、煙草の箱さ拾ったパチンコ玉入れで、調子良ぐ振りながら話しちゃっきゃ。
ラジオさ流れる宝クジ当選者の、インタビューにだば手え止めで聞いでら。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗、毎日一輪だげ花買ってきてさ、
事務所の神棚の湯呑みさ飾って、
嬉しそうさして新聞記事の話、誰がしかなぐ投げ掛げでら。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗、給料日さなれば封筒がら6万円抜いで、
残りはとっちゃかっちゃに仕送りしてら。
いっつも焦茶色の羊皮のジャケット丁寧に着てらんず。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗、くたびれだ犬に餌やる時いっつも、ハトポッポうたうはんでや、
工場長も「鳩でねえべしや」て笑って、わぁもたまにからがってさ。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗、アダリだはんでや、わぁが机仕事してらんず。
休憩ん時も、わぁが文庫本読んでれば、肩さ顔っこ乗っけで、後ろっから一緒に読むんず。
くすぐってぇしや、いちいち漢字聞いでくるしや、かっちゃましいんず。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
晩げ、ホースで水撒いで豚の血流してらっきゃ、薄馬鹿下朗、花屋の娘っこさフラれだって泣いじゃあ。
おしるこ作って持ってって慰めでらっきゃ、うめぇはんでおかわりくれってや。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗の肌、支那の白磁陶器みてぐ白くてさ、指もたげ細くてら。
わぁが生理痛いでじゃって漏らしてらっきゃ、薄い唇やっこぐして笑ってくれでさ。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

 レバー上げる
 豚運ばれる
薄馬鹿下朗来ねぐなった。
神棚の湯呑みも、くたびれた犬も、気付いだっきゃ消えでら。
工場長も、まだ昼飯わぁと食うようになって。
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ

先週からわあが屠殺係やっちゃあ
レバー上げ下げして
要領だば分がってら
いっつも見でらはんでや
 レバー上げる
 豚運ばれる
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ
 レバー上げる
 花屋の娘運ばれる
 レバー下げる
 花屋の娘の首っこ飛ぶ
 レバー上げる
 支那白磁陶器運ばれる
 レバー下げる
 支那白磁陶器の指っこ飛ぶ
 レバー上げる
 豚運ばれる
 レバー下げる
 豚の首っこ飛ぶ


自由詩 アルビノのウスバカゲロウ Copyright 人間 2006-01-27 05:08:51
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