鍋が煮え立つまでの即興
佐々宝砂

夕暮れの空にはむくどりが群れて
毎日あんなことしてて
むくどりは飽きないのだろうかと思う私も
飽きもせず夕飯をつくる
いや飽きてるんだけど
夕飯に飽きても
生きてるのに飽きても
生きてなきゃならないらしいので
夕飯をつくる
夕飯を食う
生きることにする
むくどりは面倒なこと考えずに
面倒なことしてるな
先頭のやつが気分次第で向きをかえると
群はいっせいに向きをかえる
一羽だけ群から妙に離れたやつがいて
そんなやつに親近感を覚えてみたりするけど
私は知ってる
あいつだって
ちゃんとねぐらに帰って眠るんだ
竹籔に寒風を避けて
群のみんなでおしくらまんじゅうして
なんも考えちゃいない
それでも生きなきゃならないことだけは知ってる
きっと私以上によく知ってる
私はむくどりじゃなくて
なにもかもに飽き飽きして
見上げても
うつむいても
酸っぱいものがこみあげる


自由詩 鍋が煮え立つまでの即興 Copyright 佐々宝砂 2006-01-25 17:44:10
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