金金金(キムキムキム)
馬野ミキ
幹さん、
どうでもいいですけど
高円寺のキャバクラで詩人っていう名刺配りまくるのはやめて下さいよ。
大将二号店で2本目のつくねをほおばりながらキムがつっけんどんに言い放った
どうでもいいけどキム、それ俺のつくねだで
キム、
つくねばっか食う奴はいい詩が書けないよキム
キム
キム
キム。。。
入れたらすぐ出た
極めて感受性が鋭いのだ
これも詩にするんですか? と、大久保のホテルでTVのリモコンをつつきながら女の子がいった
その一行が一番よかった
幹さん、わたしの体に詩集を書いてください
俺は相変わらず朗読をした
俺は上手だった
俺は大抵さいしょはすごく上手だった
でも入れたらすぐ出た
■〔例題〕咳をしても一人
J1に昇格しても一人(サカつく)
世界を平和にしても一人(ドラクエ8)
■
金:「幹さん、どうでもいいですけど
うちの妹に中出しするのはやめて下さい」
キム、
ぜんぶ詩なんだ
妹も
ドアのノブも
中出しも詩なんだよ
幹さん、何言ってるのか分からんす。
全部が詩なんだったら幹さん、
オレがいま幹さんを刺しても
これもpoemなんですか?
キムはナップサックから日本刀を取り出そうとしていた
何でこいつは常にマジなんだ?
俺はおまえの詩の先生だぞ
キム。
お前は昼下がりのアンナミラーズで一体何を繰り広げるつもりなんだ?
それから俺はSevenStarのフィルターに火をつけて、キムはいつもみたいに笑い転げた
■
■
俺たちは
いつだって富士山の一合目辺りで下山したりする
真夜中に鉄塔に昇ったりしない
せいぜい丈の短いスカートをはいた女の子がいる喫茶店で
おもしろいことを探している
エロ限定しりとりを朝まで無邪気に続けたりする
サッカーが出来なかったらジダンはただの禿だと主張してみたりする
たまに皆で黙って爪の三日月を見たりする
俺たちはセリエAじゃ通用しないただのガキだ
チンピラだ
ネットヤクザだ
プレミアでも
ブンデスリーガーでも
リーガエスパニョーラでも
トルコリーグでもFCポルトのユースの補欠にさえなれないただの屑だ
俺たちは、
土のグラウンドの真ん中でどうか自分のところにパスが廻ってきませんように、とこころの中で祈る
空想の友達を作ったりする
おおっぴらにオナニーの話をすることが、広いこころを持った人間なんだと信じたりする
何も分かったりしない
グラビアアイドルの胸の谷間で平気で完全に慰められたりする
キム
1000円貸してくれ
キム
女は存在してるだけで詩だ、と童貞でも言い切れ
キム
死んでも歯を食いしばって死ぬな
キム
狂気はありふれている
そのなかにいて客観性を保つことに全力を注げ
キム
おまえが今日は4回オナニーしたら、キム
俺は5回するだろう
キム
人生は勝ち負けじゃない
キム
孤独を恥じるな
キム
おまえは今日本当に生きてちゃんと葛藤しろ
キム
俺はまだまだ恨まれているか?
キム
歴史解釈やなんかは後世の歴史家共に任せて
キム
俺たちにとって価値のあることはいつでも、
シーソーの端からはじまで全力疾走で駆け抜けることなんだぜ!
キム
キム
キム
キム
そうだろう?
今夜48号鉄塔の真下に宝物を隠そう
もう発芽することのない腐った向日葵の種や
例えばほとんど自分だけにしか価値の無い欠けたビー玉だとかメンコの切れ端
仮に百年生きたとしても題名さえ書けそうにないような
作りかけの詩のようなもの
そんなようなものを