ノート(ブルース・フォー・ア・ドッグ)
木立 悟


どこまでも道は凍っていて
空を見つめて歩くことさえできない
家も灯も星も無く
闇を目からこぼしたまま
向こうから来る犬を見つめる
彼は歩く
俺は歩く



犬は川を渡れずに
恨めしげにこちらを見ている
犬は向こう岸にひろがる森のなかで
凍りつくことを願っている
彼は俺を見る
俺は彼を見る



川沿いの道を
誰も乗っていないバスが三台
無言で通り過ぎてゆく
いつのまにかすぐ横を
犬が歩いている
そばには誰もいないかのように
ただ目の前だけをみつめながら
彼は歩く
俺は歩く





自由詩 ノート(ブルース・フォー・ア・ドッグ) Copyright 木立 悟 2004-01-26 22:48:01
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