ノート(ブルース・フォー・ア・ドッグ)
木立 悟
どこまでも道は凍っていて
空を見つめて歩くことさえできない
家も灯も星も無く
闇を目からこぼしたまま
向こうから来る犬を見つめる
彼は歩く
俺は歩く
犬は川を渡れずに
恨めしげにこちらを見ている
犬は向こう岸にひろがる森のなかで
凍りつくことを願っている
彼は俺を見る
俺は彼を見る
川沿いの道を
誰も乗っていないバスが三台
無言で通り過ぎてゆく
いつのまにかすぐ横を
犬が歩いている
そばには誰もいないかのように
ただ目の前だけをみつめながら
彼は歩く
俺は歩く
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ノート