赤い月
容子

  

  放課後の静まりかえった女子トイレ金魚が一つ産み落とされる

  揺れ動く尾びれ背びれに滲む跡肢体をつたう金魚群

  奔放に泳ぎまわるや体内の水槽覗き金魚と目が合う

  ふかふかの白綿ベットに寝かせゆく生まれた金魚が潰れぬように

  ランドセル赤色背負うその意味をトイレを泳ぐ金魚で知った

  スカートを初めて気にして階段をのぼった自分のあとには鱗

  抜け殻をランドセルへと詰め込んで家への道を泳いで帰る

  背中には教科書詰まったランドセル熟れゆく月が少女を変える





短歌 赤い月 Copyright 容子 2003-07-16 02:54:59縦
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