缶詰
本村K

静寂に染まった
うなだれた頭を持ち上げて
死んだ魚の目をしていた
ムラサキ色の眼光
ヒト気の無い道端に転がっていた
オクラの缶詰と一緒


卒業の日、A君が言った
みんな繋がっている、
 だから離れていてもいつも一緒だ  と
嘘に繋がれた腕
あなたは必死で抵抗した
血管に虫酸が走る、
 まるでドラッグの様だ  と

A君の口から溢れた汚物は
ただれた宇宙に舞い
廃棄物専用のゴミ箱に捨てられる
もう二度と脳内に触れられないため
うなだれて転がった頭を
両手で必死に掻き混ぜる
そこには誰がいる
誰もいない

やがて独りで死んでいったあなたは
ほらね、と笑った
棺桶の中に
缶詰を一緒に入れてやった
あなたが好きだったオクラの缶詰


ヒト気の無い道端に転がっていた
中身が空っぽの缶詰を
手を叩いて喜ぶひとりの子ども
七色の光線
正夢を追いかける


自由詩 缶詰 Copyright 本村K 2006-01-20 22:29:01
notebook Home 戻る