夜と源
木立 悟




黒に近い深緑から
白のうたが聞こえていた
たくさんのものを失って
望まぬちからを得た最初の日


こんもりとした光のかたまり
まるく息づく色はほどけて
指を撫で 
指と指のあいだを撫で
ゆるやかにひとつの尾にかえる


つるもなく 何を射るでもない弓を
じっと握っているのでした
握りしめているだけで
あとからあとから
ふるえはあふれ
伝わるのでした


あおい  深あおい
雪のひと房
向かい風のなか
まるく残り
さらに小さなまるいものを
包むようににじみかがやく


けだものよ
あなたの心のなかには
まだ金いろのひとがいますか
わたしではない
けがれない手の
かなしげな目の
こがねいろのひとがいますか


それは色を失くした色のある
あふれつづける応えだった
森の次の森を見つめ
重なる輪郭の譜を奏で
源はくりかえしけだものとなり
求めるものの手に触れ
駆け去るのだった


子は前髪を切り 目をさらし
髪をたばね うなじをさらし
道のむこうの途切れた道
ひとつづきの壊れた灯り
誰もいない曲がり角
何かに満ちた曲がり角をすぎ
白の奥の深緑へと
いのち見る者に見える道へと
ひとり ひとり 歩んでゆく









自由詩 夜と源 Copyright 木立 悟 2006-01-20 18:00:12
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