図書室
霜天

雨の来ない図書室では
忘れるように眠ることが出来た
背の高い書架の影で彼らは
姿を確認するために囁き合う
私の載っている本がない
私たちの乗っている街は
地球儀の上に針で止められている
誰の用意したものか、誰も知らないけれど
あなたの名前なら、足元に彫ってある
ポケットの中を探してみると、鍵が出てきたけれど
待ってくれているはずの部屋は
どうにも見当たらない


私はその中で
私の、私のための本を閉じて
その裏に落書きをして
言葉をばらばらと零して
その中の私たちへ、私は紛れていきます
僕がいて、あなたがいて、踊っているようで
あなたたちは、まだ白い行間で
笑うための隙間を探して
君と走るための
空欄を
私を、置いて


本を閉じると、世界は静まって
ストーブの、燻る音がきこえる
雨の来ない図書室では音が、無い
ばらばらになった言葉を集めると
なんとなく私のように見えた
窓の外の冬はいまだに高いので
深く、あなたが呼吸をすると
ゆっくりと、図書室も閉じてしまう


自由詩 図書室 Copyright 霜天 2006-01-20 00:24:05
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