病院
時雨

熟れたリンゴを一口パクリと、甘い味にしばし酔いしれる。
相も変わらず君は一人で、窓の外だけ眺めてる。

病院では静かにと、看護婦さんは僕に言ったけど、
意外と騒々しい人々の声を聞きながら、僕は目を閉じる。

ナースコールに救急車、時折聞こえる人の悲鳴は気のせいで有って欲しいと願いつつ
痩せた君を再度視界に入れるため、僕は目を開ける。

相も変わらず君は一人で、窓の外だけ眺めてる。

元気になってねと、君の友達は言ったから、
その言葉に君は笑ったけれど、
元気になれるものならなってると唇を噛んだのは僕だけじゃない、と。

言える言葉はすべて言い尽くしたから、あえて僕は黙っています。


願わくば、こっちを見て欲しいとは思うのだけど。



自由詩 病院 Copyright 時雨 2006-01-19 21:38:44
notebook Home 戻る