姉月
とうどうせいら

22歳の誕生日から3日経ち
私は生理になった


さあ、とお腹の中の月時計が私に言う
いつか生まれてくる赤ちゃんのために
お布団を新しいのにかえましょうね


初潮を迎えてから
ちょうど10年経つのに
考えてることは小学生の頃から同じ
―――赤ちゃんを産みたいなんて 誰にも頼んだ覚えはないのに


私が女だということを思い知らせる
クロッチの小さいしみ


このままだと
あなたの体全部がだめになってしまう
昨日の診察で先生が言った
だから


もっとご飯を食べて
もっと外に出て
そう言う先生への私の答え
先生の言う通りにできるなら 私はこんな所へ来てないよ



生意気な私
近頃は歯向かってばかり



血色悪く
日毎に痩せている体
絡まっていく人の群れ
みんなが幸福を望んでいる
そのパワーが気温を密やかに上げ
ルールが見えないなら一度死んでみるといいと
スクランブル交差点の向こう側で
群集がわっと
一斉に
笑う



それでも生理がやってくる
少し狂いがちな月時計で
それでも必ずやってくる
私があなたを忘れても 体はきっと覚えている


薄っぺらな体にも
ちゃんと赤い血は流れてる


唇が
キスの味を忘れても
耳が
あの人の声を留めなくても
乳房が
誰に求められなくても
声が
誰を悦ばせなくても


私は私
私は女
私はいつかの どこかの母



清潔なナプキンをあてがうと
今晩は
微かにいびつな
まあるい月で


私のことを屋根瓦の上から見下ろし
お姉さんのように優しく


淡く
霞んだ










自由詩 姉月 Copyright とうどうせいら 2006-01-18 21:12:41
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