雪眠る
モリマサ公

降り積もるものだ 
わたしたちは更新されていく 
みえているものがあきらかにぬりかえられていく色に
毎秒ごとに降り積もるものに 
くちびるを噛みながら凍り付いた湖の上をショートカットする
トナカイの群れとその息
全体的に真っ青な風景
というより本質的な無音 
身体の内側だけがそれこそ世界全体を動かすように脈うっていた

「はー」


セイホー
真夜中にひとりで飛ぶ鳥 
どこまでも水面はまっさらで 
あるのはあぶくひとつだけ 

病気のねことひなたでねそべる 
斜めになったたてものがこっちをみてるね
しろくろの日本地図がみずにぬれています
洋服をきた木たち
いきている
音楽
手描きの馬
はだいろのふうせんが天井をうめつくしていく



セイホー



ホー


昼間とはおもえないほどくらい
家中がひろくてさむい
音楽から虹のようなのがでてきて
肋骨のあいだからからだのうちがわへとゆっくり
すいこまれていく
酸素にはすこしぶどうのような味がついていて
それは孤独ににていた
ガムをかんでいたからかもしれない
まちではふめるくらいのちいさいあかりや
くるまよりおおきな文字たちが
わたしたちをそっとみあげたりみおろしたりしていて
未来から見れば神は
あのころも今もおなじ
もっとずっと未来からみれば
すぐそこにある未来だってやっぱそうだね
ほそい骨が虹のようにすこしずつのびていく


メモ

大好きな女の子にキモイとおもわれても
プレゼントとしてえらばれるようなポエムは
ブックオフで100円になっても
ゴミ処理場でもやされるか
裁断機でこまかくなってトイレットペーパーで復活するかしても
ポエムをやめなかった
なぜならポエムには意志がないから
自分からポエムになることもないし
やめることもなかった
おい
ポエムなんて気楽なもんだよ
水道橋の駅にある屋台のおでん屋でくねくねしながら
終電ぎりぎりまで日本酒をちびちびやって
「死んでるみたいに無言なおやじ」にからんでやった
おやじの横顔は誰にも似てなかったし
これからもずっと誰のものでもなかった
気楽なもんだよポエムなんてさ
ひっく
空になったグラスを形だけあおって
おやじは前方を睨みつけてこういった
ひっく
今夜の月はすげえぞう
おい、


エスカレーターを駆け上がって
最終の扉が閉じる
常温のつりかわにぶらさがる
まぶたのうらがわに
うっすらとしろいしみがにじむ

運ばれていく









                                 2006年2月22日    ひつじ座


自由詩 雪眠る Copyright モリマサ公 2006-01-18 16:36:22
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