球根
銀猫

凍えの夜に
面相筆で刷いた薄雲が
星座に風を満たし

十字に居並ぶ太古の紋様は
くっきりと現在を刻印し
ありふれた永遠を
わたしに見せつける


生は
背中の痛みで
諦めは
伸びかけた髪が語り部となる


躁と躁の狭間を漂う空白は
ときに忘れかけた哀しみを耳打ちし
無意識、朝方の頬に
砕いた水晶を
ほろほろと散らす

翠の眼は鏡に映らないのだ

こんな様子に
弱々しいこころなら
違う服を着れば良かった

やわらかい、と選んだコートは
冬に頼りなく
翻るたび
衣目から冷静が逃げてゆく

そうあって
わたしは一塊の球根となり
硝子瓶に用意された涙の分子で
根と芽吹きとを育み
営みを思い出さなくてはならない


生きる









自由詩 球根 Copyright 銀猫 2006-01-17 22:49:55
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