球根
銀猫
凍えの夜に
面相筆で刷いた薄雲が
星座に風を満たし
十字に居並ぶ太古の紋様は
くっきりと現在を刻印し
ありふれた永遠を
わたしに見せつける
生は
背中の痛みで
諦めは
伸びかけた髪が語り部となる
躁と躁の狭間を漂う空白は
ときに忘れかけた哀しみを耳打ちし
無意識、朝方の頬に
砕いた水晶を
ほろほろと散らす
翠の眼は鏡に映らないのだ
こんな様子に
弱々しいこころなら
違う服を着れば良かった
やわらかい、と選んだコートは
冬に頼りなく
翻るたび
衣目から冷静が逃げてゆく
そうあって
わたしは一塊の球根となり
硝子瓶に用意された涙の分子で
根と芽吹きとを育み
営みを思い出さなくてはならない
生きる