新宿の母
虹村 凌

誰も居なくなった新宿にたった一人新宿の母だけが残った

今日も彼女は小さな椅子と机を出して手相を占おうとする
空き缶と吸い殻と破れたチラシが道を転がり
ネズミもカラスもゴキブリも姿を見せない
太陽だけが燦々と輝いている

誰も居なくなった新宿にたった一人新宿の母だけが残った
新宿の母は新宿の父の帰りを待つ為に
ずっとずっと待っている
誰も居なくなってしまった新宿にたった一人だけで待っている

誰も居なくなった新宿など有りはしないのに
誰も居なくなった新宿でたった一人新宿の母だけが残るんだろう


自由詩 新宿の母 Copyright 虹村 凌 2006-01-17 22:18:37
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