ちいさなもの
黒田康之

なくしてしまった
ちいさなものを
どうしてもあたためたくなったので
ぼくはふゆのひざしのなかをあるく

ぼくにながれてくる
このふゆのひのかぜは
かなしいおととむなしいたいおんで
ぼくのこのこーとのなかにしのんでくる

そんなときぼくはどんなかおで
このふゆのひをいきていけばいいのだろうか

おそらくきっと
そのちいさなどうしようもないいとしさは
このひだまりのなかにあるとしんじて
あるいてみるしかないのだろう

つちぼこりいろのこーとにひざしがしみこんで
ゆったりとつかれたぼくのはなのおくに
はるのにおいと
やわらかなねむけがちょこんとすわり
ぼくをあたためてくれるおんがくを
ぼくのためだけにかなではじめるそのしゅんかんをもとめて

ぼくは
ちいさなものを
どうしてもあたためたくなったので
ふゆのひざしのなかをあるく
しかないのだろう

ああ
あるく
ぼくはあるく


自由詩 ちいさなもの Copyright 黒田康之 2006-01-17 11:30:43
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