アナログの月
まほし

目蓋に浮かぶのは 淡い光
脳裏に浮かぶのは パソコンの残照

会社から帰ると
バスタブよりもベッドよりも
まずはソファに沈みこんでしまう

ストッキングを脱ぐと
両脚が渇きを満たすように
皮膚呼吸をはじめる

定規では正せない
巻尺でも計れない
緊張の糸が
ハチミツがとけるように
ほどけてく・・・
ほどけてく・・・

体に浮かぶのは 疲労の上澄み
心に浮かぶのは 忘れかけたリズム

四角い箱の中で
悲鳴を上げそうだった「わたし」が
夜のしじまを味わえることに
微かに感謝して

バスタブにベッドに
沈みこむ前に
まずは時の波間に
ゆらめいてから起き上がろう

空に浮かぶのは アナログの月

秒針に
微塵切りされることなく
のぼってく・・・
のぼってく・・・


自由詩 アナログの月 Copyright まほし 2006-01-14 09:23:34
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