クスクス
松本 涼
高い高いビルとビルの間に真冬でも
青々とした葉っぱをいっぱいにつけた大きな木があって
その木の葉っぱたちは風が吹く度に
小さく身を寄せ合ってクスクスと笑った
僕はその木の前にある鉄のベンチに腰掛けて
午後の仕事の段取りについて考えていたのだけれど
葉っぱたちのクスクスが気になって
そのうち考えるのをやめてしまった
ボクは昨日どくだみの生霊にとり付かれる夢をみたよ
ひゃあー(サワサワー
そんなのまだいいじゃん
オレなんてあそこの牛丼屋の眼鏡の兄ちゃんに
むしり取られる夢だったよ
あのとぼけた兄ちゃんに?(クスクスクス
ねえねえ
次に強い風が吹いたら
オイラはあの雲の上まで飛んでいくんだ
何言ってんだよ 行けるわけないだろ(ザワザワー
ところでわたしたちって
いつになったら紅葉とか出来るようになるの
え?おまえまだ諦めてないんだ(クスクスクス
高い高いビルとビルの間で僕は
次に吹く強い風を待っていた