クスクス
松本 涼


高い高いビルとビルの間に真冬でも
青々とした葉っぱをいっぱいにつけた大きな木があって

その木の葉っぱたちは風が吹く度に
小さく身を寄せ合ってクスクスと笑った


僕はその木の前にある鉄のベンチに腰掛けて
午後の仕事の段取りについて考えていたのだけれど

葉っぱたちのクスクスが気になって
そのうち考えるのをやめてしまった




     ボクは昨日どくだみの生霊にとり付かれる夢をみたよ  
     ひゃあー(サワサワー  

     そんなのまだいいじゃん
     オレなんてあそこの牛丼屋の眼鏡の兄ちゃんに
     むしり取られる夢だったよ
     あのとぼけた兄ちゃんに?(クスクスクス

     ねえねえ
     次に強い風が吹いたら
     オイラはあの雲の上まで飛んでいくんだ 
     何言ってんだよ 行けるわけないだろ(ザワザワー

     ところでわたしたちって
     いつになったら紅葉とか出来るようになるの
     え?おまえまだ諦めてないんだ(クスクスクス




高い高いビルとビルの間で僕は 
次に吹く強い風を待っていた










自由詩 クスクス Copyright 松本 涼 2006-01-11 08:05:43
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