ディキシーの幽霊
---

渋谷の町で何をためらうのか野良犬がひとり
歩道橋の前で階段を見上げている
さもエスカレーターかのように
タイミングをはかって
揺れている

俺はそれを見ながらネギ焼きで焼酎を飲んでいる
(いやどこにも)
どこにも焼酎などないのに
言ってみる

そんなことは、まあ、いいのだ
それよりもさっきからお前が上ろうとする階段にある落書きが気になって
それはあれだ
一見何かの告白か告発のような感じなのだが
一文字
(ああ一文字だよ)
麺というのが気になって

ああ俺はそれを読みたいのだ
そこをどいて欲しいのだ
お前がその階段を上ろうと上るまいと構わないから
俺はその死にかけた落書文学を読みたいのだ

と、まあこんな調子ではあるけれど
歩道橋などありはしないのに、俺
言ってみる


自由詩 ディキシーの幽霊 Copyright --- 2006-01-11 05:17:26
notebook Home 戻る