墓碑銘
石畑由紀子

時々
理由もないのに ふと
立ち止まりたくなる
その時
そこには
透明な人の透明な碑があって
私たちは
それとは知らぬまま
刻まれた言葉を
心の指先でなぞっている
急に泣きたくなったり
遠いいつかを想ったり
背筋が伸びる気がしたり
するのはだから
そんな
風のふく午後

そして
そうとは気づかぬまま
指先の言葉を胸のポケットにそっとしまって
歩きだす

透明な碑は
無言の語りべとなって

時々
理由もないのに ふと
独りじゃないような気がするのは
そのせいです




自由詩 墓碑銘 Copyright 石畑由紀子 2004-01-24 03:08:08
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