アンパンマンと呼ばれた私の弟
和泉 誠

アンパンマンは正義の味方
弱い者が困っている時
誰かに助けを求める時
アンパンマンはやってくる
「やめるんだ!」

アンパンマンはかっこいい
誰もが一度は認めたはずなのに
いつからみんなアンパンマンに
憧れるのをやめてしまったのかな?
いつからみんなアンパンマンを
うっとうしいと思うようになってしまったのかな?

アンパンマンは決して強くはない
顔がぬれると力が出ない
敵達はずる賢くて卑怯だから
いつもアンパンマンの顔を狙う

アンパンマンと呼ばれた私の弟には
ジャムおじさんは新しい顔を届けてくれなかった
優しいバタ子さんも役に立たないチーズさえ

アンパンマンと呼ばれた私の弟には
カレーパンマンも食パンマンも助けにこなかった
ましてかわいいメロンパンナちゃんなんて

顔がぬれて力が出ないアンパンマンに向かって
弱虫君は機転を利かせて唾を吐いた
ずる賢くて卑怯な敵達は大声でそれを笑った

アンパンマンはそれでも泣かなかった
自分が正義の味方である事を知っていたから
だから家に帰ってきてから
ドアを閉め切って一人でこっそり泣いていたんだ

私もその頃自分の事で精一杯で
よそ見なんかしていられなかったから

だからあなたのその汚れなき高貴なる魂
それを今更だけれど歌にさせて
あなたが私の弟であること
私はそれを胸を張って誇れるから


自由詩 アンパンマンと呼ばれた私の弟 Copyright 和泉 誠 2006-01-07 10:34:41
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