報われぬもの
木立 悟




紅い氷に
蒼い光はそそがれて
溶けては凍り
溶けては凍り
土へと向かう重なりの
まばゆい柱になってゆく


雪が召ばれ
風が召ばれる
木々は皆いっせいに
かしいではもどり
かしいではもどる
そのあいだも新たな力が
くりかえしくりかえし召ばれつづける


ひとつの色の奥底で
午後は激しく変わりゆく
天地に散らばる名を隠し
自ら名の無いものとなる


報われぬものだけがひかりかがやき
自らの涙を歩んでゆく
伝わらぬ言葉を描く指先
何も伝えずに消える吐息


ありのままに凍りつく木々
窓に映る銀の顔
柱は低く無音を照らし
足跡の下の名を見つめつづける


報われぬ道だけがひかりかがやき
召ばれるものたちはとどまらず
清らかな嘘を拾う指先
無名の窓をすぎてゆく









自由詩 報われぬもの Copyright 木立 悟 2006-01-05 16:03:49
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