報われぬもの
木立 悟
紅い氷に
蒼い光はそそがれて
溶けては凍り
溶けては凍り
土へと向かう重なりの
まばゆい柱になってゆく
雪が召ばれ
風が召ばれる
木々は皆いっせいに
かしいではもどり
かしいではもどる
そのあいだも新たな力が
くりかえしくりかえし召ばれつづける
ひとつの色の奥底で
午後は激しく変わりゆく
天地に散らばる名を隠し
自ら名の無いものとなる
報われぬものだけがひかりかがやき
自らの涙を歩んでゆく
伝わらぬ言葉を描く指先
何も伝えずに消える吐息
ありのままに凍りつく木々
窓に映る銀の顔
柱は低く無音を照らし
足跡の下の名を見つめつづける
報われぬ道だけがひかりかがやき
召ばれるものたちはとどまらず
清らかな嘘を拾う指先
無名の窓をすぎてゆく