距離・庭園
塔野夏子

異なる方向をもつ
いくつかの時空の瞳が
時折ふと輻輳ふくそうする

その焦点に結ばれる
あのひとの像

たまゆら
その眼差しも
仕草も
声も遠く
けれどかつて触れたことがあるような
なつかしさで

(その輪郭をふちどるのは
 木洩れ日か
 それとも
 水面に揺れる光の反射か)

この胸に湧く想いは
かなしみに似て
けれど知っている
それを
かなしみと名づけてはいけない と






自由詩 距離・庭園 Copyright 塔野夏子 2006-01-03 13:26:09
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