Ｋくんの家はぼくの家のとなりです
Ｋくんとぼくはいつもいっしょに遊びます
ゲームをしました
その前の日は漫画をよみました
そのさらに前の日はやっぱりゲームをしました
ぼくもＫくんも漫画が好きでゲームが好きで
いっしょに遊ぶのが好きでした

ある日クラスでかわいいと評判のＹさんが
Ｋくんのことを気持ちが悪いといいました
Ｋくんはたまに鼻水をたらしていて
シャツをちゃんとズボンにしまってなくて
おまけにメガネをかけているから
気持ちが悪いそうです
Ｙさんと仲良しのＢさんも同じことをいいました
Ｂさんと仲良しのＡさんも同じことをいいました
Ａさんと仲良しのＧくんも同じことをいいました
気がつくとクラスのみんなが
Ｋくんは気持ち悪いと言いました
Ｋくんの机は汚いと言われて
誰もさわらなくなりました
Ｋくんに誰かがぶつかるとみんながきゃーきゃー騒ぎ立て
汚い汚いとふれた場所をなすりつけあいます

それから何日かしてＹさんが
Ｋくんと並んで座るぼくの前に立って
「ばいきんがうつっちゃうよ」と
大きな声で言いました
するとクラスのみんなが
ぼくをみて
ぼくだけをみて
しんぞうがどきどき
「ばいきんがうつっちゃうよ」
Ｙさんの声がもう一度きこえます
どきどきどきぼくのしんぞうがどきどきどき






しょうがないんじゃないかなあ
Ｋくんはたまに鼻水をたらしていて
シャツをちゃんとズボンにしまってなくて
おまけにめがねをかけているし
考えてみれば
汚いし
気持ち悪いし
気持ち悪いし気持ち悪いし
気持ち悪いし気持ち悪いし気持ち悪いし



ぎぎぎっと音をたてて
ぼくはぼくの机をＫくんの机から１センチほど離しました
みんなの笑い声が湧き上がって
ぼくはＤくんやＮくんのところに逃げるように行きました
横目にＫくんの姿が見えたけど
Ｋくんの表情を不思議なほど覚えていません

Ｋくんの家はぼくの家のとなりです
みんなぼくに「かわいそうだね」と言います
ばいきんがうつりそうだからです
最近はぼくから「Ｋくんが引っ越せばいいのに」とみんなに言います
ばいきんがうつるのは嫌だからです
ぼくもＫくんも漫画が好きでゲームが好きで
いっしょに遊ぶのが好きだったこともあったけど
いまはそんな時があった事を後悔しています







ぼくは後悔しています






ぼくは後悔しているんです