一枚の絵から
肥前の旅人

          こうず まさみ

 校長室の片隅に
 二つ切り大の洋画が 掛かっている
 その絵には画面いっぱいに
 二頭の犬が 描かれている
 描き手を信頼しているのか
 寝そべっていたり
 目先があらぬ方向を見ていたり
 今にもムクッと起きあがり
 画面から飛び出しそうだ
  
 市主催のコンクールに入選したの
 恥ずかしそうに応える卒業生の
 言葉に惹かれ
 自宅から運ばせたものである

 厨房の扉の向こうに見えるその絵
 出会うたびに一息入れて
 しばらくたたずむ

 十四歳の青春を走っているS子の
 姿が浮かびあがる
 からだろうか


自由詩 一枚の絵から Copyright 肥前の旅人 2004-01-22 16:26:52
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