思い出として

一面に広がる海を前にして
子供の視線はずっと波を追いかけています

深く息を吸い込んで
寄せてくる世界に叫びます
その広さを叫びます

内容はちょっと どうでもいいのです


その後ろ姿を
おじさんが静かに見守っています
どこか遠くを見ています

深く息を吸い込んで
帰っていく背に向かって
溜息をつきます

かける言葉がどうにも 見つからないのです


二人はいつまでも海を見つめ続け
海はいつまでも二人を見つめ続け

一人だった二人と海は今

丁寧に切り取られ
アルバムに飾られ

何も知らない誰かによって
時折思い出されています


自由詩 思い出として Copyright  2005-12-30 20:37:16
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