思い出として
健
一面に広がる海を前にして
子供の視線はずっと波を追いかけています
深く息を吸い込んで
寄せてくる世界に叫びます
その広さを叫びます
内容はちょっと どうでもいいのです
その後ろ姿を
おじさんが静かに見守っています
どこか遠くを見ています
深く息を吸い込んで
帰っていく背に向かって
溜息をつきます
かける言葉がどうにも 見つからないのです
二人はいつまでも海を見つめ続け
海はいつまでも二人を見つめ続け
一人だった二人と海は今
丁寧に切り取られ
アルバムに飾られ
何も知らない誰かによって
時折思い出されています