広がらない空想

窓ガラスの内側から
草原のような海を見渡す
波と風が
交互にやってきて
その青はどこまでも青かった


窓ガラスの内側から
光がこぼれ落ちる森の空気を吸う
鳥は人のために鳴かず
虫は例え話など
知らない世界で生きていた


窓ガラスの内側から
未だ見たことの無い景色を辿る
想像には
どうやら限界があって
いつの間にか
もう辿れない記憶を見ている


窓ガラスの内側には
何も無い
それに気付いたら
もうここには居られない



窓ガラスの内側から
彼らの笑顔を
ただそれだけを眺めている
何も言わなくても
それだけで良かった

多分 
それだけで良かった


自由詩 広がらない空想 Copyright  2005-12-29 23:55:41
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