広がらない空想
健
窓ガラスの内側から
草原のような海を見渡す
波と風が
交互にやってきて
その青はどこまでも青かった
窓ガラスの内側から
光がこぼれ落ちる森の空気を吸う
鳥は人のために鳴かず
虫は例え話など
知らない世界で生きていた
窓ガラスの内側から
未だ見たことの無い景色を辿る
想像には
どうやら限界があって
いつの間にか
もう辿れない記憶を見ている
窓ガラスの内側には
何も無い
それに気付いたら
もうここには居られない
窓ガラスの内側から
彼らの笑顔を
ただそれだけを眺めている
何も言わなくても
それだけで良かった
多分
それだけで良かった