【 戦死 】
豊嶋祐匠

 
 
 君が死んだと聞かされた
 
 つい
 昨日の事だったと言う
 
 砲弾が君を襲ったんだ
 
 数千℃の灼熱の中
 君がゆっくり熔けて行ったと
 
 
 あの眩かった君の目は
 最後まで何を見つめていたのか
 
 あの優しかった手のひらは
 何を握っていたのか
 
 いつも笑っていた唇が無くなるまで
 何を呟いていたのか
 
 爛れてゆくその皮膚は
 どんな風に君を剥いで行ったのか
 
 皆んなを勇気づけたあの強い声は
 その時、何を叫んでいたのか
 
 最後に残った君の心は
 誰の名前を呼んでいたのだろうか
 
 
 声が途切れるその時まで
 瞬きする瞼が消えてしまうまで
 
 叫ぶ声の力さえ
 振り絞れなくなるまで
 
 君はその最期まで
 何を望んだのかを教えてくれないか?
 
 
 私たちは
 
 君の父親だから
 
 君の母親なのだから。
 
 
 
 
 
2005.12.29
 
 
「 男たちの大和 」という邦画が、この年に封切られました。
そのメイキングを通して出演した俳優さん達が、役を演ずる中で戦争の悲惨さを体感したと語っているのをTVで目にしました。戦争を知らない僕らではあるけども、そんなふうにして自分なりの立場や取り組みの中で、想像力をもって感じ取れる物は有ると思います。僕も時折そんな事を感じられるようにと、望んでいます。


未詩・独白 【 戦死 】 Copyright 豊嶋祐匠 2005-12-29 14:32:43
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