傷痕
恋月 ぴの

振り解こうとしたその腕の力に
恐れ戦き
声にならぬ悲鳴を上げ
逃げ出そうにも逃げ出せず


生き抜く事は人の本懐であるとしても
手当たり次第しがみ付く執着心は
どうしてこうも醜いのか


潔く生きれば良い
たとえ孤独であっても
風雪に耐えれば良い
無言のまま立ち尽くす白樫の如く


総ては叶わぬままに
もがきながら
暗い沼の底から伸びる一本の白い腕


おいでおいでと呼んでいるのか
立ち枯れの葦原はざわめき
一本の白い腕に浮き出る血脈は
避けられぬ末路を辿る外塔婆となる


自由詩 傷痕 Copyright 恋月 ぴの 2005-12-29 06:41:35
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