オレンジジュース
霜天
いつもの手紙の更新を、また忘れたりしながら
滑り落ちるような坂を
今日は黙って落ちる
街外れの図書館はいつも通りの匂いがして
さらさらと視界が変換されていく
名前を名前と呼んだのは何時だっただろう
五十音の順番で
順序良く忘れていける
懐かしむ人の数だけ
足跡は深く刻まれていく
しっかりと見ていたのは何処だっただろう
結び目は固いようで
遠かった
空が割れて虹が出来る前
透き通っていく空気をいつまでも見ていた
人たち、だった
オレンジジュースは変わらない夕暮れで
いつだって僕らを迎えてくれる
手に取る音は、音で
何も変わっていけない
かたちにならない声が聞こえる
いつまでも生まれない図書館の本が
変わらない世界を見せていた