ふたりシメサバ
佐野権太

食卓の新聞紙をめくると
塩サバが現れた
よく冷えていて堅い
奥歯で静かに食む

ガタガタと襖が開いて
まぶしそな顔
(パパおかえり
(うん、ただいま、寒くないかい?
向かい側にぺたん
重そうな首を傾げて食卓にもたれる

食卓の隅
好物のシメサバを見つけて
複雑な想いで箸を伸ばす
慎重に
真ん中あたりをつまみあげると
三切れ釣れた

(おさしみ、つながりきょうだいだね
ぼんやりしたまま
そんな素敵なことを言う君も
将来ママみたいになるのだろうか

僕は左の頬だけで微笑み
ふと不安になって
味噌汁の具を探りながら
柔らかいシメサバを
ゆっくりと噛みつぶした


自由詩 ふたりシメサバ Copyright 佐野権太 2005-12-21 12:53:12
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