ふたりシメサバ
佐野権太
食卓の新聞紙をめくると
塩サバが現れた
よく冷えていて堅い
奥歯で静かに食む
ガタガタと襖が開いて
まぶしそな顔
(パパおかえり
(うん、ただいま、寒くないかい?
向かい側にぺたん
重そうな首を傾げて食卓にもたれる
食卓の隅
好物のシメサバを見つけて
複雑な想いで箸を伸ばす
慎重に
真ん中あたりをつまみあげると
三切れ釣れた
(おさしみ、つながりきょうだいだね
ぼんやりしたまま
そんな素敵なことを言う君も
将来ママみたいになるのだろうか
僕は左の頬だけで微笑み
ふと不安になって
味噌汁の具を探りながら
柔らかいシメサバを
ゆっくりと噛みつぶした