テレビ
岡村明子
白い壁にまたたく
ニュース映像の
影
無音
の部屋で
テレビの人間はいつも忙しくしている
何かを攻め
何らかを責め
居心地の悪さを拭いてまわるように
忙しく
口を動かしている
のが
醜悪だと感じたときから
画面ではなく
壁を見ることにした
誰も攻めてこない
誰も責めにこない
はずのこの部屋で
だめじゃんあんた
と言ったとたんにベルが鳴る
テレビ電話の向こうで
数え切れないほどの
ダンボール
宅急便
永遠に続くかと思われた
はんこ押しの作業を終え
未来から押収された
「だめじゃんあんた」
や
「ばかじゃないのあんた」
が詰まったダンボールを積み上げる
小さな部屋はすぐにいっぱいになった
ダンボールにつぶされてポテトチップスが香ばしい音をたてた
未来永劫にわたって
絶対安全だと思っていたこの場所
私がだめでばかだと認定したものに囲まれて
いまやテレビが(壁が)見えない
V字姿勢をとりながら
さてどうやってこの部屋をでようかと考える
とりあえずトイレに行くにはどうすれば?
見上げると
天井に
当たらない天気予報がまたたいていた
これは喜劇だ
とんでもなく
醜悪な
喜劇だ