テレビ
岡村明子

白い壁にまたたく
ニュース映像の


無音
の部屋で
テレビの人間はいつも忙しくしている

何かを攻め
何らかを責め
居心地の悪さを拭いてまわるように
忙しく
口を動かしている
のが
醜悪だと感じたときから
画面ではなく
壁を見ることにした


誰も攻めてこない
誰も責めにこない
はずのこの部屋で

だめじゃんあんた

と言ったとたんにベルが鳴る
テレビ電話の向こうで
数え切れないほどの
ダンボール
宅急便

永遠に続くかと思われた
はんこ押しの作業を終え
未来から押収された
「だめじゃんあんた」

「ばかじゃないのあんた」
が詰まったダンボールを積み上げる
小さな部屋はすぐにいっぱいになった
ダンボールにつぶされてポテトチップスが香ばしい音をたてた

未来永劫にわたって
絶対安全だと思っていたこの場所
私がだめでばかだと認定したものに囲まれて
いまやテレビが(壁が)見えない
V字姿勢をとりながら
さてどうやってこの部屋をでようかと考える
とりあえずトイレに行くにはどうすれば?

見上げると
天井に
当たらない天気予報がまたたいていた

これは喜劇だ
とんでもなく
 醜悪な
  喜劇だ


自由詩 テレビ Copyright 岡村明子 2005-12-21 00:24:16
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