夕波
霜天

地下鉄から生まれた人たちが
夜の寸前で吐き出されている
空へ続く四角い階段
斜めに染まる街の角度で
溶かされそうになっている

午後六時は動き出せない
指先も爪先も逃げるように
眠るには早い世界で
明日のために薬を飲む
白、黄色、橙色
元気になった気がするのは、ほんの一瞬だけ


爪切り
少しずつ私を削っていく
走り抜ける一日を
ドーナツの穴から眺めてみる
回り続けてしまうのは、内も外も
どちらでも
食べきってしまった後でも
止まれないのはなぜだろう


寄せては返す夕暮れの色
今日も地下鉄の海から生まれた人が
地上で、あちこちで、溶けている
点や線や、その他色々を結びつけて
今日というかたちに揃えてみせる
溶けゆく人は一様に黙って
街から遠くを、どこか遠くを

夕波が聞こえてくるように


自由詩 夕波 Copyright 霜天 2005-12-20 19:03:16
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